だけど根拠もなく、ただの私のカンだったから、相良くんに言うことはなかった。 空気清浄機の止まったこの静かな空間で、気付けば私は窓と相良くんに挟まれていた。 相良くんは窓に手を着き、そのあと暫らく同じ体勢のまま無言で窓の外を見つめていた。 今にして思えば、奇妙な時間。 『…今日はもう帰るわ』 チャイムが鳴る数分前、ぽつんと零した相良くんがいなくなってしまうまで、私たちは微かな互いの呼吸の音だけを聞いていた。