須具利家恒例、お花見大会。


この日ばかりは、どんなに忙しくても必ず帰ってくる母さん。


翌朝、二日酔いで死にそうになっても、楽しいの一言で煽り飲むし‥‥


絡まれる家族にとっては最悪な時なんだ。


そう、“絡まれる家族”にとっては、の話。


なぜだか知らないけれど、泥酔いの母さんには毎年ターゲットの家族がいて


その家族は限定一名限りで


酔いが回りきった母さんに名前を呼ばれたら最後。


ピッタリとくっ付いて離れない。


地獄のお花見日和になる。


一番厄介なのは、その白羽の矢がいつ放たれるか分からないと言うこと。


逃げ出そうものなら--


「ん?…どこ行く?」


「…あっ…あ、と、トイレ?」


母さんの呼び掛けに、嘘も甚だしい言い訳をするーーー


みんなが、息を呑んだ瞬間、その名前が母さんの口から放たれた。


「檸檬…座りな」