「須具利さん。」


「はい?」


「オレ、去年のホワイトデー……忙しくて時間がなくてさ…お返しコンビニのマシュマロですませたんだよね。」


……。


─ええ、覚えてますとも。忘れるわけございませんわ!


心の中で毒づいて、お絞りで口元を軽く抑えあたしは、冷ややかな顔で円藤を見た。


「それが原因だったのかなぁ……今年のバレンタインにチョコくれたの須具利さんだけだったんだ。」


「え?」


「他の人はさ、みんな貰ってたんだよ?なのにさ、オレとはワザと避けるように2月14日は目線も合わせないようにしてるのが──ホントショックで……。」


………。


「でもさ、須具利さんだけはくれたんだよ!オレ嬉しかった!……本命だったら、もっと嬉しかったんだけど……。」


「は?」


「あ、いや、冗談!たまに事務所に迎えに来るイケメン君。彼氏でしょ?」


「ええ、まあ。」


あたしの返事にニッコリまた笑って


「うん。おれ、マジ義理チョコだって、めちゃくちゃ嬉しかったんだ!だからさ、コレはほんのお返し。うん。好きなだけ食べちゃってよ!」


ニコニコしながら、“大将!ウニ2つ!”
そう言った。