「おはようございます。」


あたしは、仕事場では、美人で優しくおしとやか“大和撫子”で通っている。


誰もあたしの本性を知らない。


勿論。あたしが
“海老で鯛を釣ろうとしている”事にも気づきもしないだろうし……


「須具利くん。ちょっと……」


所長に呼ばれた。


「…はい?」


キョトンとした顔でついて行く。何のことだか全く分からないわ。の表情を崩さない。


演技は完璧!


心の中は来たッ!!
目に写るのは所長の手に揺れるペーパーバッグ──あの、深くて黒っぽい紫色は……