「…香織」





正直、あの翔とやらと別れた次の日の朝から、香織とは会っていなかった。





俺が立ち入ったことをうっかり聞いてしまったから、てっきり怒っているのかと思っていたのだが…。





「テッちゃんは?今日は一緒やないん?」



「あ、ああ…」





俺は少しずり落ちたメガネを押し上げながら言った。





「彼女とお昼食べるからって、この近くの食堂に行ったよ」



「へぇ〜〜。あんなカルそうやのに、ラブラブなんやなあ」





そう言った後、香織はお箸を挟む形で両手を合わせ、いただきます、と小さくつぶやいた。