その時、玄関からガチャガチャと鍵をあけようとする音が聞こえて、私は急いでトイレに散らばった、袋や妊娠検査薬の箱をポケットに詰め込んだ。
そして、私は妊娠検査薬を手にした。
「奈緒ー?帰ってんのかー?」
兄が大きな声を出しながら、家をうろうろ歩く足音が聞こえた。
「トイレかー?おーい、いんだろー?子供みたいな事してないでさっさと出てこいよー。」
兄の声なんてこれっぽっちも、私の耳になんて入っていなかった。
その代わりに大きな心臓の音と、これからどうするのかという考えだけが、頭の中をぐるぐるまわっていた。
そう、私の持つ検査薬には、しっかりと線が入っていた。
