「あ…あと、気をつけろよ。」 教室に入る直前で、彼の手が私の肩に触れた。 「え?」 「奈緒。」 「なにが?」 そう言ったけど、私の問い掛けに葵が応じることは無く、その気まずい雰囲気の中、教室に入った。 「遅かったじゃないか!早く席に着いて教科書開けー。」 担任が黒板に字を書きながら、私達に向かって言った。 「あ、あのっ…葵…さっきの。」 「あんたが殴った奴。」 それだけ言うと、彼はカバンを手にとって、また教室を出て行ってしまった。 その日、葵は教室へは戻っては来なかった。