「つまり、自分のための涙ってわけ?」
一口ずつビールを含んだ後、優が一番に口を開いた。
「よくわかんない・・・・。でもアイツのためじゃないってことは確か。」
私は、一気に飲み干した。
「おかわり!」
手持ちぶたさになった私はタバコに火をつけた。
「クスクス。やけ酒?」
その飲みっぷりを見て、華が笑った。この笑顔に騙された男達の顔が浮かぶ。
「やけ酒って言うより、鬱憤晴らしって感じ?」
優も続けて火をつけた。
「そんなんじゃない。何か悲しいとかじゃなくて、よくわかんない。」
「まあ、未練があるわけじゃないんでしょ。なら、いいじゃん。」
優は相変わらず、さっぱり言い切る。
「クスクス。泣いたって聞いたから、驚いたけど大丈夫そうで良かった。」
「大丈夫は大丈夫だよ。」
「何それ?」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
しばらくの沈黙の後、結局いつもの飲み会に変わった。
私達にとって男との別れって対したことじゃないわけ?これが10代20代前半なら、誰かが泣いて、慰め合って、励まし合って・・・・・。もっと失恋に対して大事だったはずだ。何かのイベントみたいに。

「ところでさぁ。舞。肌荒れてるよ。」
突拍子もなく優が呟いた。
「クスクス。歳には敵わないのよね。」
華もその笑顔と裏腹に、毒を吐いた。
「睡眠不足で、しかもニキビまで出来た。」
私はほらっと二人に顔を近づけて、ニキビのを見せびらかした。
二人は顔を合わせて笑った。
「なによぉ〜?」
優は笑いながら
「若いわね〜。ニキビだって。羨まし〜い。」
言葉とは裏腹に皮肉って馬鹿にした言い方だ。
「クスクス。優。失礼よ。」
華も、まだ笑ってる。
一息ついて優は言った。
「舞。もうニキビって言わないの。フ・キ・デ・モ・ノ。」
・・・・・・・・・・・・・・・・
ワハハハハ。
一瞬の沈黙の後、お酒も回り始めて、私達は周りの目も気にせず、甲高く笑った。いつもの私達だ。

あれ?今日は何の日だっけ?

いつの間にか忘れていた。私の失恋記念日?
・・・・・・・・・・・あっ。解った。何で泣いたか。
「自分のため」だ。
可愛い自分のため。私はこれだけ頑張りました、お疲れ様の涙なんだ。
「な〜んだ。」