「どうしてここにいるか?って?」


智久は雪湖の頭をポンポンと
ニ回小突いた。


「たまたま携帯に電源入れたら
女将さんから電話が来て雪湖が来たって。
それから三原さんからも
電話が来たよ。
あのまままじめに携帯の電源入れなかったら
今頃は札幌だよ。
でも戻る列車がずっとなくて
困ってたら
ご主人が車で迎えに向かってるって
迷惑かけてしまったよ。
この気まぐれお姫さまのおかげで
みんな心配したんだぞ。」


智久の低い声が沁み渡った。


「だって・・・・
まだトモくんに会いたくなかった。
今だってまっすぐ見られると
隠れたくなる……。
私は、もう………。」


雪湖は下を向いた。


「俺だって……本当はまっすぐ顔を
見ることなんてできないよ。」


智久の言葉に
雪湖は首を少し傾げた。


「あの日・・・・
雪湖が乗ってこなくて
心配になって電話したんだ……」