「捨てられた?」

稔は雪湖の言葉を聞き返した。


「最初はね、そんな風に思っちゃダメって
思って我慢してたけど
きれいごとでは語れなかった。
大柴の家での差別は
私にとっては孤独との戦いだったから
両親でも恨まないと生きていけないんです。」



「なかなか言うね~
稔は思わず吹き出した。



「ここにもずっと来たかった。
思い出が消えさるまえに
楽しかった思い出を
もう一度胸にしまいたいって。」



「ここで会ったきみは
無邪気に笑っていたよ。」



「そうですか。
ここでは幸せだったんですね。
いろんな夢を描いてたんだろうな。」


バラ園に母と自分の姿を
想像してみた。