その後、僕と彼女はボウモアを2杯ずつおかわりをした。

マスターは短くなったキャンドル・ライトを新しいものに交換する。新しいキャンドルはまるで場違いな所に咲いてしまった花のように違和感を漂わせたが、やがてそれはすぐに馴染み、周りの空気と溶け込んでいった。


「今日はありがとう」

彼女は言った。

「今度からは砂時計なんかやめて、目覚まし時計にするといい。なんていったって時間が来ると教えてくれるスグレモノだ」

僕は提案した。

僕の腕時計は23時30分を示している。

砂時計だろうが目覚まし時計だろうが、穴が空いてりゃ砂はこぼれるし電池が切れりゃ時計はその針を止める、僕はふとそう思った。



「飲み過ぎるなよ」

僕は言った。

「ありがとう。大丈夫よ」

彼女は返事をした。

「さよなら」

「さよなら」


僕は“epigonos”を出た。

僕は胸一杯に外の空気を吸い込み、そして吐き出す。息は冷たい夜の空気に晒され、白く漂って消えた。