僕と彼女は静寂に包まれた。僕はどうしていいか分からず、ただ煙草の煙の行方を追う。

こういう時、何を喋ればいいのか、あるいは喋らない方がいいのか、いつも僕は分からなくなる。

そして僕はその静寂を破ろうとする時、大抵はロクでもない事を言い出すと相場は決まっていた。

「じゃあ、大学のゼミ準備室で君が後ろから僕を抱きしめた時の続きから始めてもいいんだぜ?」

一瞬で思い出したのか、彼女は目を丸くし、顔を赤くした。

「それ以上言ったら思いっ切りバッグをぶっつけるわよ」


やはり今回もそうなった。


しかし静寂は一気に溶け出した。