「1分の遅刻」

彼女は言った。

「いきなり呼び出されて1分の遅刻は、遅刻とは言わない。君はむしろ僕の事務処理を誉めるべきだね」

僕は彼女の隣に座った。


“epigonos”はどこにでもありそうな小さなBARだ。

マスターが作るカルパッチョ以外は、内装も酒も選曲もたまに来るピアノトリオのメンバーも、いまいちぱっとしない店だった。

しかし彼女は好んで“epigonos”を指定した。理由は分からない。そして彼女は決まってカルパッチョとボウモアを注文する。


僕は煙草に火を点けた。