先生が私の体をそっと離す。
先生の膝の上に置かれたチョコレートの箱。
先生がチョコレートをひとつ摘んだ。
それを口に入れて食べる先生。
そして……。
再び、私の体をギュッと抱きしめると、私の唇に先生の唇が重なった。
チョコレートのように甘くてとろけるようなキス――。
口の中に広がるチョコレートの甘い甘い香り。
唇をそっと離す。
「俺は……もしかしたら世界一の幸せ者なのかもしれない」
『どうして?』
「だって、バレンタインの夜に嬉しいことが、ふたつもあったから……」
『嬉しいことがふたつ?』
「ひとつはハルからもらったチョコレートだろ」
『うん』
「もうひとつは……」
先生はそう言うと、私の体を少し離して、目線を私のお腹に移した。
私がお腹に手を当てると、その上から先生の手が重なった。
そして目線を私の方に戻す。
「もうひとつは、大事な大事な宝物を授かった」
先生はそう言って、優しく微笑んだ。



