どこでもドアをくぐると、念じたとおり、懐かしい母校の別館のトイレに現れた。時間は午後3時近く、もうすぐ授業が終わりみんな帰り始めるころだった。テニスコートと自転車置き場の間に佇んでいた私は、帰り支度をして、自転車にまたがる学生達を眺めていた。どうすることもできずに。
溜め息をつきながら、別館のトイレへ向かい、歩き出したその時、楽しげに肩を寄せて歩く、みやびと杉下とすれ違った。そして、二人は笑いながら、私の前を自転車で走り去って行った。私の前に切ない空気を残して。