掌に収まるくらいのボールが、
僕らの間を行き来する。
このボールが、まだ掌に収まりきらなかった頃から、
僕らはこうやってキャッチボールをしていたね。
言葉にするのが少し恥ずかしいこと、
伝えたいのに伝わらないこと、
言葉にできない何かを、
僕らはこうして届けてきた。
今では、思い通りに届ける事ができるようになったな。
緩やかな孤を描いて、
君のグローブに向かって、
たまに外れても、ちゃんと捕ってくれる。
左に逸れても、右に逸れても。
いつの間にか、
夢が現実になって、
仕事になって、
それでも、隣には君がいて、
相変わらずキャッチボールは続いてた。
それが嬉しくて、嬉しくて、
僕は、捕り辛いボールばかり投げてしまっていたんだ。
向かい合って、キャッチボールしていたのに、
君が言葉にできなかった気持ちに、
気づいてやる事ができなかった。
"ごめん"
"本当に、ごめん"
何度言っても、足りない、届かない。
だって、もう君はここにいないのだから。
それでも、この気持ちを君に届けたくて、
僕は今日もボールを投げる。
この空に向かって。
なぁ、
"キャッチボール、しようぜ"