時計の針が動く。




約束の時間まで、あと1時間。











服を選んで、

メイクして、




会ったときの笑顔の練習。











早く時間が進めばいいのに。







何回も時計を見るけど、わずかしか進んでいない針。







30分前になったら、部屋を出る。







時間にはまだ余裕があるのに、足は少し急いでる。







早く、
早く、


あなたに会いたい。
















約束の時間、少し遅れてあなたは来る。




練習通りの笑顔、できてるかな?


かわいいって思ってもらえた?












会ってすぐ、あなたの手を見るのは、あたしの悪いクセだね。


分かってるのに、現実逃避。




でもあなたは、そんなあたしの行動を見透かしてる。






腕には、時計をしていない。









指には、あの人との約束がはめられていない。







手を握って、見上げると、



少し困って微笑むあなたがいた。









ねえ、あたし、泣きそうだよ。










悲しいんじゃないよ?





でも、嬉しいのとも違う。











苦しいよ。

あなたに嘘をつかせることが。



ままごとみたいなあたしのワガママ。



あなたはちゃんと、あたしのままごとに付き合ってくれるんだね。



苦しいよ。



あたしは、子供みたいに夢を見ているだけで、あなたに全部背負わせて。







でも、


ごめんね。










離れてあげられないよ。








ごめんね。