「4年前、俺に先生が結婚するって言った時、なんて言えば結婚をやめてくれた?」
扉を開ければすぐにいなくなってしまう。
そんな扉などはじめからなければいいのに。
しかしその扉がなければ私達の壁は晒されてしまう。
「そんなの今更……」
「お願い。答えて」
その真っ直ぐな視線は揺らぐことを知らない。
「一言でよかった。愛してるって」
「……愛してるよ先生。昔もこれから先も、今もずっと」
昔に戻ろうだなんて思わない。
戻ったところであるのは苦痛だけだ。
愛しい人を思うことが辛いなんて気持ちなど、もう味わいたくもない。
追いかけたいと誰が思うものか。
優しさだけを残し、目の前から消える痛みを知っているから。
End.

