「返却は木曜日です」
「はい」
なにも借りないのはどこか気が引けて、ルールでも覚えてみようかとサッカー入門を読んでみる。
……ばかみたい。
窓からの風は気持ちいい。
きっと今日も、あの芝生の上にはこんな空気が広がってるんだろう。
斗真くん、頑張ってるかな。
「華っ」
「ひゃっ!」
な、なんで!?
図書室を出た廊下の角を曲がると、なぜかそこには斗真くんが壁に寄りかかって立ってた。
驚いた私は、やっぱり反応がおかしい。
「なに…なにしてるの」
「なにって華を待ってたに決まってんだろ」
「えぇっ!?」
急なドキドキで声は裏返って。
そんな私を見ながら、斗真くんはまたいたずらに笑う。
「待ちぶせは嫌い?」

