―― チリン…






ICUの入り口に着くなり、鈴の音が部屋の奥の方から響いた気がした。






そこに足を向けると、彼女はいた。




ピッ…ピッ…と音のなる機械から出ている管に繋がれ、頭に包帯を巻かれた痛々しい姿ではあったけれど、彼女は生きていた。








「お帰り……吉沢さん」








俺は眠っている彼女にそう声を掛けて、窓際のブラインドを上げた。




既に空は明るくなり、激しかった雨はすっかり止んでいた。








……もう、朝か。








長かったような……短かったような夜が明け、また忙しい一日が始まる。






それまでは、晴れ渡った空に太陽が昇るのを眺めながら、君が目覚めるのを待つとしよう。






そして……君が目覚めたら、昨日見た懐かしいあの頃の話でもしような。












そんな俺の心に、鈴がチリン…と応えたような気がした。














       〜 END 〜