でも今回の事で、これから先、もっと患者の事を考えられるようになるだろう。 いや、現実の世界に帰ったら、そんな医者に改めてなりたいと思う。 「吉沢さん、帰ろう?」 自然に口から出た言葉だった。 「私でも……幸せにれるのかな?」 彼女はお母さんに問うように、鈴に向かって語りかけた。 俺はそれには答えなかった。 その代わり……そっと彼女の手を握った。 きっと、彼女のお母さんが答えてくれているだろう。 幸せになれる……と。