「先生?」
まだ寝てるんですか?…とでも言いたげな表情で看護師は俺の顔をまじまじと見た。
「あぁ、ごめん。すぐ行く」
そう慌てて返事をし、椅子の背もたれに掛けてあった白衣を素早く羽織り、看護師と共に仮眠室を後にした。
……それにしても、気分が悪い。
余程ひどい患者で、手の施しようがないとか、そんな予感なのだろうか?
否……そんな事は多々あった。
救命医になって、幾度となく人の死に直面してきた。
決して、慣れる事はないが、立ち止まる事もない。
否、出来ない。
1つの死で立ち止まっていたら、次々と運ばれてくる助かるかもしれない患者まで、死に追いやってしまうのだから。