団地にはいくつかの棟が立っている。 小学生の俺から見上げるお化け団地は、高く圧迫感があった。 ―― リーン…… 鈴の音が目の前に立つ棟の上から聞こえた。 見上げると、口を開けたお化けが俺を飲み込もうとしている錯覚に襲われそうになった。 額にはじっとりと汗が浮かぶ。 手で拭うと、額は冷たくなっていた。 お化け団地に飲み込まれるのが怖いのか…… 吉沢 ユウコに会うのが怖いのか…… 今の俺にはわからなかった。