「……じゅう」 俺は、脇目もふらず、ユウコが走って行った方へと足を向けた。 その場所には団地がある。 公園に隣接している、古い団地。 天気の良い日ですら、どこか暗く、陰湿な雰囲気を醸し出している。 そんな団地を、みんなは『お化け団地』と呼んでいた。 もちろん……俺も。 別にお化けなんて見たことはなかったが、色々な噂がこの団地にはあった。 『幽霊を見た』 『昔、飛び降り自殺があった』 そんな根も葉もない噂を、子供の頃は楽しんでいた。