ロキスが茫然と自分を見つめているのに気が付き、レセルは不機嫌そうな声で言う。

「何?笑ったから怒ったの?」

そっぽを向くレセルにロキスは今の正直な気持ちをハッキリと口にする。

「笑うと可愛いんだな…」

「!」

初めて言われた言葉だったのか、レセルは耳を真っ赤にして目を瞬かせる。
そして、眼を合わせないようにしながら呟いた。

「な、何言ってんのさ…」

『僕は男だよ!可愛いなんて言わないでよね!』と
怒鳴られるのかと覚悟していたロキスは、レセルの思わぬ態度に胸が熱くなる。

(やばい…俺、本気でレセルに惚れたかもしれない)

そう思ったロキスは静かに近くへ寄り、レセルの両肩に手を置いてキスを迫った。

「レセル…」

「え?ちょっ…な、何を…」

 突然の事にレセルが戸惑い眼を丸くした時、

「レセル様!危な~いっ!」

ゴスッ

「ぐはっ!」

強烈な飛び蹴りが腰に炸裂し、ロキスは壁に飛ばされる。
蹴りを放ったのは言うまでもなく機械人形のナナだ。
ナナは華麗に着地をして両手を上に上げ決めポーズを取った後、
すぐさまレセルの両手を握って心配そうに聞く。

「レセル様、大丈夫ですか?狼魔王に食べられるところでしたね!」

「おいっ!こら!誰が狼魔王だ!…っていうかだ、来られないんじゃなかったのか?」