壁に寄りかかり朦朧とする意識の中、
痛みに堪えていると遠くから足音が聞えてきた。
水は元に戻ったものの生き残り水魚が居るかもしれない危険地帯に
誰が来たのだろうと、ロキスは足音の方に眼を向ける。
しかし、毒のせいで視界がぼやけ目の前に来た人物が誰か確認する事ができない。

その時…。

「こんな事で死ぬような、使用人を持った覚えはないよ」

「…レセル?」

憎まれ口で正体を悟ったロキスが呟くと、レセルは小さく呪文を唱え解毒を始める。
毒が体から抜けていく事で意識が次第に戻っていき、
回復するレセルの姿がロキスの目に映った。

相変わらずの無表情だったが、
この場所へ来てくれた事実にロキスは素直に嬉しさを感じ礼を言う。

「ありがとな。助かった」

ロキスの言葉を聞いたレセルは顔を背けて呟く。

「別に…心配で来た訳じゃないよ。
 使用人の不始末をするのも主人の勤めだから来ただけ」

そう言うレセルの耳が赤くなっているのを知ったロキスは、素直じゃないなと微笑む。
回復が終わりレセルの手が離れると、ロキスは壁に手を着きながら立ち上がる。

「汚染水魚の毒は猛毒だよ。僕が来なかったら死んでいたんじゃないの?」

傍に落ちていた剣をロキスに渡しながらレセルは言う。