それを見たロキスは素早く剣を抜き一筋で全てを薙ぎ払い倒した。

『何やてっ!』

予想もしない事態を見たリーダー水魚は眼を大きく開き口を開けて驚く。

「攻撃魔法じゃなくても攻撃はできるぞ」

これ以上、犠牲を出さないために鋭い目で言った言葉だったが

『ひ、怯むな!かかれ!』

仲間の仇とばかりに次々と水魚達が襲い掛かってきた。
仕方がないとロキスは水魚達を全てを倒し、
あっという間にリーダー水魚へと剣を突きつける。

「今すぐ、この場所から立ち去れ」

『は、はい…仰せのとおりに…』

ロキスを甘く見ていた水魚は冷や汗を浮かべて大きく頷く。
その表情を見たロキスは戦意がないと悟りロキスは剣を下ろす。

「仲間達には悪い事をしたな…すまない」

正当防衛だとは言えリーダー水魚にとっては、家族だったに違いない。
そう感じたロキスが倒された無数の水魚達を振り返った時だ。

『甘いで!』

ザシュッ

「なっ!」

リーダー水魚が自分の鋭い牙を抜き、ロキスの腕に切りつけた。
直後、激しい眩暈に襲われロキスは地に足をつける。

『ほんまに甘ちゃんや!魔王の器やない!殺すなら全員殺さんかい!』

言いながらリーダー水魚は口を大きく開けてロキスの首を目掛けて襲い掛かる。

「くっ…!」

痺れる腕で剣を持ちロキスは力を振り絞ってリーダー水魚を攻撃した。
一撃で倒された水魚は無言で地に落ち溶けていく。
リーダーが倒された事で無数に居た周りの水魚も溶け、
汚染されていた水の色も元に戻っていった。

「結局…武力で解決か」

平和的にとはいかない現実に納得が行かず、
静まり返った場所でロキスは一人小さく溜息を吐く。

傷を受けた腕からは血が流れ、毒が回っているのか徐々に全身が痺れ始める。
魔族は癒しの術を持たず、魔王であるロキスは防御魔法を使えるが
回復魔法は持ち合わせていない。