水魚達の様子を見たロキスは長居させられると察して言葉を続ける。

「答えろ、何故ここにいる?」

鋭い質問を受けた途端に周りの水魚達は緊張したように静まり、
リーダーの水魚は言う事を躊躇うように呟く。

『それはですな…その…ラクス様が…』

「!…まさか、ラクスが指示したのか?」

意外な人物の名前が水魚の口から出てきたので、ロキスは驚き聞き返す。

ラクスとはロキスの双子の弟で、本が好きな頭脳明晰な青年。
ロキスと特に仲が悪い訳でもなく容姿端麗、人望も厚いラクスであったため
次期魔王だと周囲から囁かれ、ロキスもラクスだろうと疑わなかった。
だが、就任儀式日に歴代の魔王の力と偉大な力を持つ『魔王魂』という宝玉が選んだのは…。

(一番、喜んでくれたのはラクスだった筈だぞ。あれは嘘だったのか?)

魔王になる事を望んでいたのなら恨まれて当然だ。

「!」

パシィン

突然、殺気を感じたロキスがシールドを張ると、目の前で無数の牙が砕ける。

「何の真似だ?」

攻撃したのは言うまでもなくリーダーの水魚だ。
動揺している周りの水魚達を余所に、リーダー水魚は勝ち誇ったような顔になる。

『ラクス様から聞いて知ってるで~…
 攻撃魔法は怖くて使えんのやろ?
 シールドしか使えん魔王のあんさんを倒すのは容易いで。
 お前達、ラクス様を魔王にするために倒すんや』

大勢で掛かれば負ける筈がないと思ったのか周りに居る水魚達も目の色を変えた。

(はぁ…やっぱり話し合いは無理だったか)

大きく溜息を吐き、ロキスは脱力する。
その態度を見たリーダー水魚は勝てると判断したのか笑い出す。

『今さら後悔しても遅いで~。あんさんは此処で死ぬんや!』

「それは無理だな。お前達は魔王になるって事が、まるで解ってない」

『負け惜しみを…かかれ!』

 リーダー水魚が合図をした矢先、ロキスの近くに居た数匹が襲う。