だが、ナナは期待外れの返事をロキスに返す。

「無理ですよ~…私に使われている機材は繊細で、
 水に長時間浸ると錆ができます。
 それに私は古代文明の遺産みたいなものですから
 取り替えもできません」
 
損傷時は自己修復機能で回復しているという。
察するにナナはレセルに発掘されたようだ。
レセルとナナの出会いはどんなものだったのかと想像していると、
目的地である貯水施設の建物が見えてくる。

黄色の壁で覆われた縦長い施設だ。
街の中心にあり、地下の水道管から住宅などに利用されている。
四つの水道橋が東西南北から施設に繋がっていることから
内部で管理、清浄にしているのだろう。

「どの水道橋に侵入したのか分かる?」

レセルが施設の前で立ち止まり、振り向かずに聞く。
男が自分に質問されていると知ってハッとし、慌てて答える。

「は、はい。俺の畑はあっちだから…北です」

方角を確認したレセルは施設の玄関へ向かう。
すると、そこには数人の住人達が暗い顔で集まっておりレセルの姿を見つけた途端、
安堵した顔を全員が浮かべた。

「レセル様だ!レセル様が汚染水魚を退治しに来られたぞ!」

話を聞きつけた住人達が居ても立ってもいられず施設に集まったらしく、
よく見ると水を頻繁に利用する飲食店の者や母親など年配の人々が多い。

そんな人々に小さく頷いたレセルが施設の中へと入ると、
その場に居た全員が後に続く。
内部は外観とは異なり小部屋のような作りで、
制服を着た一人の女性が受付らしき場所に座っていた。
女性はレセルに気付くと姿勢を正して立ち上がる。

「北の水門を閉じて水を抜いて」

「な、何かあったんですか?」

住人を引き連れている事から只事ではないと感じた女性が聞くと、
レセルではなく執事が焦ったように言う。

「汚染水魚が侵入したのだ。直ちに北の水門を閉じるように」

「ええっ!わ、分かりました」

女性が後ろにある扉へ入ると、暫くしてガコンという音が遠くでする。