「ちょっと~行かないの?」

その時、片付けを終えたエリサがロキス達に呼びかける。
ふと見るとレセルは扉を開けて外へ出ているところだった。

「お、お待ち下さい」
それを見た執事と男は慌ててレセルのを追いかけ、ロキスも足早に追う。
謁見の間から廊下に出たロキスは、
レセルと男二人の後ろを歩くエリサに近づく。

「エリ…お嬢。このまま行かせても良いのか?」

名前を呼ぶと殴られると察し、言い直して聞くとエリサは眼を合わせず呟いた。

「良い訳ない。でも…お兄様は皆の期待を全て背負ってる。
 エリサは、信じるしかないの」

エリサにとっては、たった一人の兄。
死地に行こうとしているレセルを縋り付いてでも止めたいのは当たり前かもしれない。
レセルは今どんな気持ちなのかとロキスは前方を窺うが、
顔は見えず歩く姿にも動揺している様子はひとつもない。

「あれ?どこかに行くんですか?」

一同がロビーに出ると階段を掃除していたナナが首を傾げて聞く。
レセルは立ち止まり階段の上にいるナナに行き先を告げた。

「貯水施設まで出かけてくる。連いて来るも来ないも自由にして良いよ」

それだけ言うとレセルは再び歩き始め門に向かう。
ナナは箒を持つ手を止めて少し考え込んだ後、
にこやかに頷いて素早く降りてくる。
一緒に連いてくる事に決めたらしい。

(あ、確かナナは機械人形だよな…)

それなら毒の充満する場所でも平気ではないかと、
ロキスは歩きながら貯水施設に向かっている事情を説明して頼んでみた。