「ところでロキス殿。どちらの街から来られたんですかな?」

 執事である老人がロキスを見極めようとするように眼を光らせて聞く。

「えっ!えっと…」

魔界の大陸から来たとは言えず、
ロキスは助けを求めるようにレセルの方を見る。
しかし、レセルはエリサと共にチェス盤を片付け状況を無視していた。
薄情者めと思いながらロキスは適当に話を作る。

「へ、辺境の大陸にある小さな村さ。武術や魔術に自信があったから城へ来たんだ」

嘘がバレないように真実を少し混ぜてロキスは言う。
その時、後ろで話を聞いていた男が話に交わってきた。

「そういえば…さっき城が魔物の群れに襲われたとか。もしや、君が全滅させたのか?」

「う…ま、まぁ…全滅させたというより撤退させたという感じだな…」

上空から襲撃したため街の住人達はロキスの顔を知らないらしい。
いや、住人だけでなくレセルを護衛する兵士にも会わなかった。
英雄王なので守る必要はないと兵士が思っているかレセルの意向なのだろう。
複雑な気持ちで答えると、ロキスを見ていた男と老人の目が瞬時に変わった。

「あれだけの魔物を撤退させるほどの腕とは素晴らしい!」

「さすがはレセル様が選んだ人だ!魔王も悔しがっているだろう!」

「確かに襲撃した時は後悔した…」

「ん?何か言いましたか?」

「ひ、独り言だ」

思わず本音が飛び出してしまいロキスは笑って誤魔化す。
幸い、二人もそれ以上は聞かず強さに感服したように笑う。