そう思ったロキスが駆け寄ろうとした時、老人が憎々しげに口にした。

「汚染水魚を侵入させたのは、きっと魔王の仕業に違いありませんぞ!腹立たしいですな」

「…って、おい!何で俺のせいに…」

ドンッ

「ぐはっ!」

思わず言い返そうとしたロキスの頭に、レセルが雷を落とす。
衝撃を受けて床に倒れているロキスの存在に老人と
男は初めて存在に気付き振り向く。

「あの…レセル様?そちらの方は誰でしょうか?」

初めて目にする人物に老人と男が眼を丸くしている間、
レセルは倒れているロキスに近づき指を差して紹介する。

「新しく僕の使用人にしたロキス・ブルーノア。年齢不詳」

「なっ!レセル様!執事の私に相談もなく決めたのですか~?」

「腕は確かだから大丈夫だよ」

「ま、まぁ…レセル様がそう仰るのなら認めますが…」

主人のレセルが選んだ相手を拒否する訳にもいかず老人は溜息雑じりに頷く。
その間に倒れているロキスの傍にレセルはしゃがみ込む。

「おい…俺、何かしたか?」

何故に雷で攻撃されなければならないのかとロキスは憎々しげに顔を上げて聞く。
すると、悪びれた様子もなくレセルはいつものように無表情で言った。

「君が魔王って事、普通の人には言わないようにね」

「何でだ?」

ロキスの顔をじっと見た後、レセルは答えず黙って立ち上がる。
自分で考えろと言われていると悟ったロキスは、
それ以上は聞かずに床から起き上がった。