後ろを見るとベルクートが懐から丸い時計を出し、
時刻を見てローズとロミオを促す。

「むむっ!おやつの時間か。お前達、帰るぞ」

「子供かよ」

ロキスの言葉は全く耳に入っていないベルクートは
腰に手を当てて指を突きつけ叫ぶ。

「魔王!今度、逢う時は年金の支払い時だ!
 覚悟していろ」

そう勝ち誇ったように言われたロキスは、
言葉の意味が分からず一瞬だけ思考が停止する。

「…って、それを言うなら『年貢の納め時』だろ!」

「うむ。そうとも言うな」

「そうとしか言わねーよ!」

言葉の勉強を一からやり直して来いと思考するロキスに、
ベルクートはVサインを額に当てたポーズを取り颯爽と去っていく。

「さらばだ!」

その後をローズがロキスに投げキッスをして続き、
ロミオは丁寧にお辞儀をして扉を閉め三人の馬鹿勇者たちは帰っていった。

嵐の去ったような静寂の中、紅茶を飲んでいたレセルが溜息を吐くロキスに言う。

「良かったね。友達が出来て」

「全然、良くないだろ!ってか友達じゃねーし!」

出来れば知り合いになりたくなかったとロキスは落胆してレセルに反論する。
そんなロキスの袖をエリサが引っ張り呼ぶ。

「?」

ロキスが顔を向けるとエリサは口をへの字にして赤い顔で言った。

「さ…さっきは助けてくれて…ありがとう。一応、礼は言っておくわ」

意外なエリサの言動に驚いたロキスだったが、すぐに笑顔になり頷く。
初めは上手くやっていけるかと不安に思っていたロキスは、
この時少しだけレセル達との生活も悪くないかもしれないと確かに感じていた。