関わり合いになると余計に疲れると感じて、ロキスはレセルの方を振り返った。

「おい、レセル。お前の客人だろ?何とかし…」

「レセル様~紅茶が入りました」

「ありがとう」

「エリサと一緒に飲みましょう!お兄様」

「って、こっちの状況を無視して勝手に寛ぐな!」

指を差して反論するロキスに、ティーポットを持ったままナナが言う。

「え?ロキスさんも一緒にお茶します?」

後ろの三人が居ないなのなら賛同しただろうが、
彼らを無視してお茶を楽しむなどロキスに出来るわけがない。

「客の相手をするのも使用人の仕事だよ」

紅茶を飲みながらレセルが本から眼を離さずに静かに言う。
その態度に脱力して反論しようとした時、後ろに居るベルクートが震えた声で聞く。

「そ、そんな…レセル様、もしや魔王を使用人に…部下にしたのですか?
 私達が毎日毎晩早朝と部下にして欲しいと頼み込んだり尾行したり
 手紙を出したりしていたのに~」

「ストーカー並みだな…おい」

もし自分だったら耐えられないと脱力しているロキスの後ろで、
ナナが何の悪びれもなく笑顔で三人組に言う。

「あ、手紙は残していても無意味なので全て未開封のまま消し炭にしちゃいました」

「何ぃ~っ!」

ベルクートが一際大きな声を上げて絶叫する。
そのまま床に両手を着いて涙声で呟く。

「徹夜で書いた手紙だったのに…封も開けて貰えないとは…っ」