「あ~…酷い目にあった」

頭と背中の埃を払いつつ、ロキスは三人組を見る。
外見から察するに冒険者のようだが、三人組は勇者の証である腕輪をしていた。
勇者とは魔物討伐対で主に街や村を守っている者達。
彼らは魔王を倒す事を悲願としており、この世の災いは全て魔王のせいだと主張している。

(目が合っただけで攻撃してくる俺達にとっては厄介者の連中だな。俺らは害虫かつーの)

目前の三人組も攻撃してくるか?とロキスが警戒して身構えていると、
ピンクの髪で露出度の高い服を着た女が両頬に手を当てて呟く。

「あら…魔王って、結構カッコイイのね。もっと獣みたいなのかと思ったわ」

ウルウルとした目でロキスを見つめる女に、
壁まで飛ばされていた剣を持った男が鼻血を出したまま説得する。

「ま、待て!甘い誘惑の香りを体中から出して油断させる術かも知れないぞ!」

「どんな術だよ…」

そういう術を出せる奴が居たら見てみたいものだと脱力しロキスが言うと、
剣の男は鼻血を拭き胸を張って言い返す。

「ふふふっ…私が術を見破ったので慌てふためいているな?」

「どこをどう解釈したら、俺が慌てている様に見えるんだ?」

「そんな鋭い思考の持ち主たる私達の自己紹介をしよう!いくぞ!お前達!」

「聞けよ!人の話!」

ロキスが叫びを無視し、剣の男は横にしたVサインをこめかみに当て大きな声で言う。

「私はベルクート!魔法剣を優雅に振るう勇者!」

「そして、あたしはイブ・ローズ!鞭を華麗に操る女勇者」

「お、俺は百発百中の銃を扱う勇者ロミオ・ローズ」

「三人で一つの勇者隊!その名も『シャイニングヒーローズ』!」

 キュピーンとポーズを取る三人組をロキスは頭の中で勝手に名前をつける。

(勇者3馬鹿トリオだな…)