「レセル様~!お客様ですよ~」

「お客?」

英雄王に会いに来た民だろうかと、
ロキスとレセルは同時に扉の方を振り向いた。

「お兄様~!ご無事ですか!?」

ナナの後ろから現れたのは肩までの金髪を両方にまとめ、
赤いリボンを付けた子供。
顔はどことなくレセルに似ており、
美少女と評するに相応しい容姿だ。

「お兄様?…って、妹か?」

「うん」

二人が話しをしている間、少女は一歩一歩近づく。
とりあえず、挨拶しようとロキスが少女の方に眼を向けた時…

「お兄様から離れなさい!魔王!」

ドガッ

「ぐはっ」

突然、少女の激しい蹴りが腹部に直撃してロキスはぶっ飛ばされた。

「お兄様!このエリサが来たからには、もう大丈夫です!」

「うん、ありがとう」

「〝ありがとう〟じゃねーだろうが!」

蹴られた腹を押さえてロキスはレセルに指を差して立ち上がる。

「やっぱり魔王!あの程度の攻撃じゃ効かないのね。
 こうなったら…奥義…」

「問答無用かよ!…ってか、話を聞け!」

ロキスの言葉と同時に結界が出現し、一瞬にしてエリサを閉じ込めた。

「え!魔王なのに何で結界魔法が使えるの!?
 攻撃するだけの無能だと思っていたのに」
 
驚いているエリサにロキスは溜息を吐く。

「あのな~…魔王の認識を間違えてないか?」

「きっと、このまま窒息死させる気ね!
 それとも、闇の炎で丸焼きかしら!」

「だから人の話を聞けって!」

まったく聞く耳を持たないエリザに
ロキスが頭を抱えていると、レセルが微笑んで言う。

「大丈夫だよ、エリサ。あの魔王は僕の使用人にしたから敵じゃないよ」

「え!本当ですか?魔王を従わせるなんて!さすがお兄様!」

最初から説明してくれれば良いのにと思いながら、
ロキスは溜息を吐き結界を解く。
城が襲撃されたと聞いて心配して駆けつけたのか、
よく見れば髪や服が乱れていた。

(よっぽど、レセルが好きなんだな)

「まあ…何と言うか…よろしくな。エリサ」

「無礼者!」

ドカッ

「ぐふっ!」

再び、挨拶と握手を試みようとしたロキスはエリサにぶっ飛ばされる。

「女性を呼び捨てするなんて言語道断よ!
 使用人らしくお嬢様とお呼びなさい!」

(いや、女性っていうより少女だろう…)

反論したいロキスだったが、エリサのストレートパンチが
見事みぞおちに直撃し声が出せる状態ではなかった。