「…で?」

城を襲撃させていた魔物らに撤退を告げ、
レセルの居る王座に戻ってきたロキスは
耳を疑うようなセリフを聞かされてもう一度訊ねる。

「だから、今日から君は僕の使用人に任命するって言ってるの」

腕を組み王座に座っているレセルはそう言って、
他に質問は?という目を向けた。
ロキスは深く溜め息を吐いて、腰に手をあてる。

「あのな~…俺は別にお前の使用人になりたくて城を攻めた訳じゃないんだぞ?」

「解ってるよ。世界征服が目的なんでしょ?」

「う…そうだが、ハッキリ聞かれると戸惑うぞ」

世界征服が目的だと大昔ならいざ知らず、
現代で公然と口にしようものなら馬鹿にされるか
嘲笑されるかのどちらかだろう。
脱力しているロキスにレセルが静かに告げる。

「僕も世界征服がしてみたいと思っていたから好都合だよ」

「えぇ!?」

英雄と称えられているレセルが
信じられない事を言ったので、ロキスは目を丸くする。
確かにレセルが本気を出せば街一つ滅ぼせるだろう。
そこまで考えて黙っているとレセルが溜め息混じりに訂正した。

「勘違いしないでよね。僕は世界を滅ぼすつもりはないよ」

その言葉を聞いたロキスは内心ホッとしてレセルの顔を見る。
言動は冷たい印象だが目だけは澄んだ瞳だ。
こんな目をした人間が無差別に人を傷付けて喜ぶ筈がない。
そう確信して微笑んでいると、レセルが不審な目を向ける。

「何?僕の顔を見て笑わないでよ。気味が悪いよ」

「な!悪かったな!」

誰だって自分の顔を見られて笑われたら
気分は良くないが、他に言いようがあるだろう。
そう内心、腹を立てながらもロキスは言葉を続ける。

「まぁ、そうだよな~俺も滅ぼすというより
 世界の人々を服従させたいのが目的だったし」

「君が?」

小馬鹿にしたような笑みをレセルはロキスに向ける。
お人好しなくせにと思われているのが解り、
ロキスは腕を組んでそっぽを向く。

「どうせ無謀な策略だったさっ!」

「だけど、僕と一緒ならできるんじゃない?」

「え?」

不敵な笑みを浮かべて
優しく言葉を放つレセルにロキスは耳を疑う。

「君が居れば何かあった時の囮にできるし」

「そっちが本音か!」

まあ、一応は頼りにされているんだなと思い
ロキスが溜息を吐いた時

バンッ

突然扉が勢い良く開き、ナナが駆け寄って来る。