「「…………」」


お互い無言になった。


「………どうして助けにきたの?」


下を向いたまま、立川が小さな声で言う。


「…だって俺の名前呼んだでしょ?」


駆けつけた時、確かに聞こえた。


“助けて、楓君”って…。


「………うん。…すごく怖かった。」


声を出さずに、静かに泣いているように見える。


俺はそんな立川がすごく愛しくなって、戸惑いながらも優しく抱きしめた。


そして、最悪な状況と分かりつつも…


「…好きだよ」


思いを打ち明けた。


立川は一瞬で泣くのを止め、体を強ばらせた。


この状況で言うなんて、やっぱタイミング悪すぎだよな…


「…………うん」


あまりに小さかったけど、俺にはそう聞こえた。


………え?


驚いて立川を見る。


しかし……


安心したのか眠っていた。


え…ちょっと待った!


俺の決死の告白はどうなったんだっ!?


ここまできて、それはねぇだろっ!?


あまりのことに、驚きとショックを隠せなかった。


だけど、怖い目にあったんだから無理もないか…と考え直し、寝ている立川を静かにベンチへと移動させた。