その笑顔に一種の安堵を感じた。


そして、俺の口はとんでもないことを言った。


「そういえばさ…あいつ誰なの?」


「あ、あいつ…って?」


ほら、立川も焦ってるじゃん。


頭ではそう分かってるのに、口が言うことを聞かなかった。


「…ほら、スタジアムで会ったヤツ…」


そう言った瞬間、立川はつまずいてコケそうになった。


咄嗟に右腕を立川の体の前に回して支えてやる。


こんなに動揺するなんて、やっぱり立川はあいつが好きなのか?


心がズキッと悲鳴を上げたその時、立川が早口で言った。


「あっ、ありがと!やっぱ楓君はあたしのお兄ちゃんみたい!困った時、必ず助けてくれるんだもん」


“あたしのお兄ちゃん”


その言葉に胸が裂けそうな気持ちになった。


次に気付いた時、俺は立川を抱き締めていた。



今、分かった。


何で俺は、


心がズキズキ痛んだり、


悲しくなったり、


嬉しくなったり、


楽しくなったりするのかが。


全部立川といると、そうなるんだ。



俺、


立川が好きなんだ。


…病気なんて、まじ笑えるな。


立川を好きなことが病気なんて、よく言えたもんだ。










すっぽり包み込めてしまう立川の小さな体を抱き締めながら、そう思った。