「あ、悪魔?」

兄が噴水に囚われている事実は胸に秘め、とりあえず襲っていた化け物の正体を話す。
三浦は最初に悪魔と名を聞いた時の俺と同じような顔をして驚いている。
まぁ、天使や悪魔が居るなんてお伽噺みたいな話だもんな。
三浦は何とか自分の目で見た事を理解しようと俺に聞く。

「この屋敷には悪魔が憑依しているんですか?」

どうする?
真実を話せば三浦の兄の事も話さなければならない。
いずれは知る事になるとして話すか…黙ったままでいるか。
そもそも、人が吸い込まれる瞬間を見ていないんだ。
信じないかもしれない。

「北川先輩?」

思い悩んでいるのが顔に出たからか、三浦が首を傾げて心配そうに呼びかける。
正直言って一人で残酷な真実を告げるのは勇気がない。
望月の証言があれば救われるが、まだ意識を取り戻す気配はないし…後回しだな。
それよりもだ、何故に三浦は閉鎖空間と化した部屋の扉を開けられたんだ?
俺は疑問に思って聞く前に、三浦が突然慌てたように言う。

「そうでした!これ、北川先輩のですよね?」

「え?」

三浦の掌に乗せられている物を見て、俺は目を疑う。
虹色に光る水晶のブレスレット!?

「花瓶の傍に落ちていたんです」

「お、俺のは…しているぞ?」

手首のブレスレットを確認して言うと、三浦は目を丸くする。
まさか、三浦が部屋に入れたのも悪魔から俺を助け出せたのもブレスレットの力があったからか?
それ以外しか考えられない。
だとしたら、少女の言っていた助ける術を見つけた事になった訳で…囚われている人達を救えるんだ。

「や…やった…やったぞ!三浦!でかした!!」

「え?え?き、北川先輩?」

両腕を掴んで喜ぶ俺に、三浦は理由が分からないと言う顔だ。

「う…ん?何の騒ぎですか?」

その時、俺の大きな声にソファーで寝ていた望月が目を覚ました。