どうしてブレスレットは何の力も発揮しないんだ?
やっぱり、もう一つのブレスレットがないと悪魔には対抗できないのか?
なら、せめて…沈む前にブレスレットだけでも外して望月に!
すでに肩から下の身体は沈んでしまっている。
顎まで沈み駄目かと諦めた時、


「北川せ…北川先輩!?」

封印されているはずの扉が開き、三浦が現れ目を見開く。

【ば、馬鹿な!何故だ!?】

後ろの悪魔も驚きを隠せずに叫ぶ。
三浦は後ろに居る異様な化け物に怯えもせず、俺を助けようと駆け寄り手を伸ばす。
手を掴まれ床から引き上げられた瞬間、


「えっ!」

突然、今まで力を発揮しなかったブレスレットが眩い光を放つ。

【ま、まさか…!こ…この光は…おのれっ!おのれ!!】

憎々しげに悪魔は言い、光から逃げるように掻き消える。
光の影響なのか痛みも傷も消え、俺は恐怖から解放された。

「今の化け物は?…あっ!き、北川先輩!大丈夫ですか?……って、あ!望月さんも!?」

さっきまで居た悪魔と現状に三浦は慌てふためいて目を白黒させている。
どこから説明すれば良いのやら…。
望月の方に顔を向けると、外傷はなく気を失っているようだった。
壁はやっぱり円形に凹み半壊していたが、望月の周辺に瓦礫がないところを見ると攻撃を避けた弾みで横の木棚で頭をぶつけたらしい。
良かった。
出血はしていないな。
とりあえず三浦に聞きたいことはあったが、まずは望月を三浦と協力してソファーへと運んだ。