緊張しつつベッドに入り、目を瞑ると闇が夢の世界へと誘う。
微睡む感覚がしたと思った瞬間、

「あれ?」

俺は屋敷の廊下に立っていた。
確かにベッドに入った筈だよな?
まさか夢遊病になったんじゃ…。
そう困惑している俺の耳に子供の笑い声が届く。
一瞬、屋敷に囚われた子供か幽霊かと思ったが笑い声には悪質な感情がないと思った。
それに廊下を見渡すと今までに感じていた、何かが潜んでいるような気配を感じない。
実は今までの出来事が夢で、こっちが現実なんだろうか?
そう期待しつつ笑い声の聞こえる方角に、少し足早に向かう。
笑い声はピアノがあった別館から聞こえていた。

「うわ…」

窓から見えた庭を見たとき、あまりの綺麗な光景に思わず感嘆の声が出る。
七色の花や青々とした緑、噴水から出る水が太陽の光でキラキラと反射していた。
童話の世界に入り込んだかのような思いに捕われていると、庭に小さな女の子が現れる。

『パパ〜!見て!綺麗な蝶々!』

白いワンピースで金色のストレートな髪を左右に結んだ青い瞳の美少女だ。
何故だろう?
どこかで会ったような気がする。
けど、美少女は外国人だぞ?
言葉も日本語で日本人の俺と知り合いなのはおかしくないか?
日本に移住している外国の家族なんだろうか?

『リア、そんなに走ると転ぶぞ』

美少女の父親だろうか。
眼鏡をかけた優しい笑みの男性だ。
父親はリアという美少女に追いつき頭を優しく撫でる。
撫でられた美少女は、嬉しそうに父親の腕にすがりついた。
そんな二人を見ているだけで、本当に幸せな家庭なんだと思う。

『あなた、リア。お茶にしましょう』

母親らしい声が奥の方で聞こえ、父親と美少女は手を繋いで呼ばれた方に向かう。