そう言われても今まで霊を見た事もなければ三浦のように霊感がある訳でもないぞ?
俺は一般社会にいる平凡な日本の大学生だ。
そう主張しようとする俺に望月は元居た椅子に座りながら聞いてくる。

「どうして、別館に向かったんですか?」

「それは…何となく行かなければいけない気がしたからさ」

自分でも何故向かったのかは解らない。
今思えば野性の勘みたいなもので、三浦の危機を察したのかも知れないが…。
確信を持つ事ができず俺の頭は混乱する。
すると、望月は答えを知っていますよと言うような目を向け告げた。

「霊的感知能力」

「はい?」

「貴方の能力です。僕の見る限り他の人とは能力レベルが高いと言っても良い」

そんな太鼓判を押されても困る。

「霊的感知能力って、何なんだよ」

「霊的なものを見る事はできませんが、気配や想いを敏感に感じてしまう能力です」

「ま、待て待て!そんな能力、俺にある訳がない」

「根拠はあるんですか?」

「う…な、ないけど」

霊力の欠片もない俺は全面的に否定する事ができず言葉に詰まる。
確かに一度も幽霊とか見た事がない。
だが、素直に能力を認めてしまうのも何だか怖い。
もしかして、幽霊恐怖症で精神が研ぎ澄まされ能力が備わったとかじゃないよな。
あ、ありえる…。
幽霊スポットは絶対に行かないし遠回りでも避けるくらいだ。
ん?でも、待てよ?

「望月、さっき俺には霊を見る事はできないとか言ったよな?」

「言いましたけど…気になるところでもありました?」

「見たんだよ」

「霊をですか?」

「た、多分…」

黒い霧だったので、霊と表して良いのか分からず俺は言葉を濁す。
本当に見たのかと疑われる前に、俺は望月に捲し立てる。

「声も聞こえたんだ。それを返せとか、俺のせいで自分の娘がとか…何の事か、さっぱりだ」

「!」

霊の言葉を伝えた時、望月が息を飲むのが解った。

「そうか…そういう事なんですね」

「望月?」

一人だけ納得している望月に、俺は眉を寄せる。