「あ〜良い匂い…お腹空きました〜」
その時、扉が開きフラフラと望月が現れる。
犬みたいな性格だなぁ。
(あれ…?)
望月が入ってきた瞬間、さっきまでの息苦しい視線の空気が和らいだ気がした。
風呂上がりの匂いのせいだろうか?
「なんだ、夕食食べて来てるのかと思ったぞ。何か作るか?」
樋口が立ち上がり聞くと、望月は力なく椅子に座り顎をテーブルに乗せて呟く。
「甘いものが食べたいです…」
「はい?」
普通は夕食抜きでお腹が空いているなら、温かいご飯だろうに…。
樋口も半分呆れながら冷蔵庫を開ける。
「えっと…甘いものね〜、ん?アイスクリームが置いてあるぞ。夏だからか?」
冷凍庫を覗いていた樋口が中から市販のバニラアイスを取り出し、望月の前に置く。
まぁ、アイスには賞味期限がないからな〜。
随分前に置いてあった物だとしても大丈夫だろう。
「お風呂の後には持って来いですね!全部食べても良いですか〜?」
「え?あ〜…い、良いぞ」
残してくれと言えば睨まれそうで、俺は素直に頷いた。
「はははっ。甘いものが好きなんだな〜」
樋口が苦笑してスプーンを望月に渡す。
「はい。特に好きなのは……!」
一瞬、望月が鋭い目になったかと思うと、スプーンを手渡す樋口の手を強く引く。
その瞬間、床に何か刺さった音がして目を向けると樋口の足元に包丁があった。
望月が手を引かなければ、確実に包丁は樋口の足に刺さっていただろう。
「あ、危ねぇ〜な…」
冷や汗を滲ませ、樋口が包丁を床から抜き取る。
「助かったぜ、望月」
「え?何の事です?」
礼を言う樋口の隣で、助けた望月は幸せそうにアイスを食べていた。
そんな望月に樋口は何でもないと苦笑して包丁を元の場所に戻す。
さっきの望月の表情は見間違いだったのか?
三浦が感じた感覚といい、浴室で俺に言った言葉といい言動が謎だ。

