心臓が壊れるんじゃないかと思うほど、心搏数が上がる。
「いらっしゃい」
優しい笑顔で出迎えられて、少しだけ泣きたくなった。
「さっき一緒にいた人は?」
「だいぶ前に帰った。
何、妬いてんの?」
いつものような意地悪な口調だけど、今日は笑ってかえせる余裕が無い。
「別に。
それより、話したいことがあって…」
中に入るかと聞かれたけど、入ったら結局いつもの展開になるような気がしたので断った。
「何、改まって」
あたしが緊張しているのが、直人にまで伝わってしまったのだろうか。
二人の間に流れる空気が、妙に重たい。

