「………今…家の前にいるんだけど…出てきてくれないかな。」




「家の前!?」




今?
雨降ってるけど…

つーかインターホン鳴らして入ってくればいいのに。



ソファーから起き上がり玄関のドアを開けると、傘もささずに家の前でうつむいているハルの姿が見えた。






「おい!何やってんだよ!」





慌てて傘を持ち、ハルに駆け寄る。




「ったく…傘もささないで何し………」






………………ハル?




ハルの肩は小刻みに震えていた。




な…泣いてんの?





ハルが俺の前で泣いたのは多分今日が初めてだ。



どんなときも明るくて、いつも笑ってるハルの涙を初めて見た。




「……中、入ろう。」



「ここで…いい…」



「でも……」



「泉は!泉はさぁ………」




そこまで言うとハルは顔をあげた。涙で潤んだ目はまるで子犬のようだ。




ハルから、目が離せなかった。






「……泉は、あたしのこと好き?」





「え………?」







突然の質問に俺は息を飲み込んだ。









「…それとも……あたしのことなんか嫌いになった?」






「嫌いにはならないよ…。」





確かにハルに振られたけど…



それはハルが悪いわけじゃない。



どうにもならないしようがないことだっただけ。



だから一旦好きになった人を嫌いになんかなれない。





「泉…………っ。」





ハルは俺の背中に手を回すと、ギュッと抱きついた。ハルの顔がちょうど肩のあたりにくっつく。




「………あたしたち…やり直せないかなぁ…」