「ひまちゃん、良かったわ!なんかすげー感情こもってたし、何よりひと皮むけたってかんじ!成長したね!」




さっきのシーンをチェックしながら監督さんが興奮気味に言った。




「あ、ありがとうございます…」




「プライベートで何かあった~?」




「なっ!ななななないですよ!」




「あはは。慌ててるし。充実したプライベートが仕事でプラスになってるのはいいことだと思うよ。いいね、青春って!」




遠い目をして親指を立てる監督にあたしは苦笑いで返した。




その日は朝から晩までずーっと撮影で、帰る頃はクタクタになっていた。



樹くんの言っていた通り、クランクインしてからというものほとんど学校に行けない日が続いている。時々、彩ちゃんとは電話やメールで近況報告し合ってるけど…。





「あーっ…今日も疲れたねー。」




樹くんが大きく伸びをして答えた。




「そうだねー。」




「………なんか最近、ひまり変わったね。」



「そ、そうかな!?」




「そうだよ。人見知りがなくなったってかんじ。前から可愛かったけど、さらに可愛くなったしね♪」




サラリと言ってのけるので、思わず胸がキュンと鳴った。





「あのさ、ひまり…お願いがあるんだけど…」



「なに?」



「……本読み、付き合ってくれないかな?ちょっと練習したいところがあるんだよね。」



練習したいところ?


「うん、いいよ。」



「それじゃあ明日、ピュアガールの撮影あるから終わったあと俺の楽屋来てくれないかな?台本持って。」



「分かった。」