シュガーベイビー★キス

「はーい。そんじゃ位置ついてくれるー?」



口ひげがやたらと凛々しいおっさんがいかにも高そうなカメラの機材をいじりながら声を掛けてきた。




「い、行きましょうか。」



「俺全然分かんないからお前についてくかんな。」




まさかあの神戸を頼る日が来るとは…



何とも言えない複雑な心境の中神戸の後ろをついていく。




シャンデリアに、ロココ調の家具、ピンクのバラの花束がささった花瓶に、キラキラした化粧台、猫足の真っ白なテーブルの上には花柄のティーカップに、色とりどりなマカロン…








「貴族かよ。」




全くテーマが分からない。





「今日は、ロリータ好きの女の子が休日に友達を自分の部屋に招待した、っていう設定みたいですよ。」



「あ、そう…」





どうでもいいから早く撮影して早く元の姿に戻りたいよ俺は。



「じゃー早速2ショットから。」



「はい!」




神戸は目を閉じたまま深呼吸した。


集中でもしてんのか?




「………始めましょう。」





顔変わったー!!
神戸だけど神戸じゃない!




「はい、仕事モード入ったね。泉ちゃん、もうちょいひまちゃんに寄って。」



「あぁ…はい…」





そうか…
仕事モードに入るとこいつキャラ変わるんだった。


俺が恋愛モードに入るのと一緒か。



そう思いながら神戸に歩み寄る。



カシャカシャとフラッシュが光るたび神戸は笑ったりツンとしてみたり表情をコロコロ変えているようだった。



俺はというと……