唇を離して、神戸の顔をのぞき込む。



喜怒哀楽のどれでもない表情をしていた。



強いて言うなら「驚」だけど。




当たり前か。





つーか、今さらだけど




俺、神戸の初キス…奪っちゃった…んだよな?





え…



それってどうなんだろう。




仕事で初キスを奪われるのと、こんな形で俺に奪われるのと、



神戸にとってはどっちが良かったんだろう。



いや…





どっちも良くねぇよな。





「したい」と思って突発的にしただけに、なんて声を掛けるべきか考えこむ…



そうしてるうちに神戸が口を開いた。





「……………あの……これは演技ですよね……?」



「え?」



「…このあとキスをするっていう流れだから、泉先輩は今してくれたんですよね?」





コイツ…




演技の延長だと思ってる…?




そらそうか…
この流れでキスしたらそう思うよな。



で?


ここは…



そうだよって答えた方がいいのか…



答えた方がいいんだよな…




だけど………




本当は違う。





「いや……そういうんじゃないっつーか……」



「………え?」







コイツに嘘、つきたくない。






「キスしたいと思ったからした。」




俺、なに言ってんだろ。