10分後………



「…よし、大体分かったぞ。やるか。」



「は、はい!よろしくお願いしますっ!」



「じゃ、さっきのセリフから読め。」



「はい………」




大きく深呼吸をしたあと、小春に成りきるようにイメージを膨らませる。




あ…そういえばキスのシチュエーション、今あたしがいるのと同じく図書室だったっけ。



放課後、先生に図書室に来るよう呼ばれた小春。



どんな気持ちだったのかな。



ワクワク?


ドキドキ?


ソワソワ?




全部か。





「……先生、話しってなぁに?」



「…この前の放課後のことなんだけど。」




うん……さっきより全然いい。心なしか泉サマが先生に見えてきたよ。




「放課後…って、何だっけ?」



「……好きだ、って、言ってくれたろ?」




「あぁ…はい。」



「あれって…どういう意味。」


「どういう意味って、そのまんまの意味です。あたし、先生のコト…好きになっちゃった。」


「好きって…それは人としてというより…異性として、ということだよな。」



「うん…」



「………正直、森本の気持ちは嬉しい。だけど………ごめん…。」






泉サマはセリフをほぼ暗記しているようで、台本には目をやらずあたしの顔を見てそう言った。




なんだか少し、ズキン、と胸が痛む。




泉サマに告白したわけじゃないし振られたわけじゃないんだけど…


やっぱり直接言われるとちょっとヘコむなあ…